冤罪を生むFBIと記者にイライラ!実話映画リチャードジュエルはお勧めのクリントイーストウッド監督作

こんにちは、ぽんぽです。クリント・イーストウッド監督作品が遂に公開されました〜。イーストウッド監督作品を劇場で観たのは「15時17分、パリ行き」と「運び屋」以来です。って事は本作が劇場での鑑賞は3回目か、、。うむ、着々とイーストウッド沼にハマっております(意味不明w)。前作の「運び屋」も良い映画だったしなぁ。彼の監督作品にはほぼハズレは無いだろうなと思い安心しながら劇場へ足を運ぶ午後となりました。ではでは本作の製作秘話含めた感想(ネタバレ)、紹介していきたいと思います。

「リチャード・ジュエル 80点(感想ネタバレ)」

予告編

作品情報

2020年劇場公開 アメリカ
ジャンル:ドラマ
監督&製作 クリント・イーストウッド
原作 マリー・ブレナー
出演者 ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ジョン・ハム

あらすじ

96年、五輪開催中のアトランタで、警備員リチャード・ジュエルが、公園でパイプ爆弾を積んだ不審なバッグを発見する。多くの人々の命を救い一時は英雄視されるジュエルだったが、その裏でFBIは彼を第一容疑者として捜査していく、、(映画comより抜粋)

目次
・1996年アトランタ爆破事件の真相を追体験できる興味深さ
・クロ過ぎる過去の奇行ゆえ容疑者となるリチャード・ジュエル33歳
・スニッカーズが繋ぐ絆!不良に見えて常識人な弁護士ブライアント
・FBIやメディアの権威に喝!監督の冤罪に対するイライラ爆発!
・無罪を勝ち取れる国?ドーナツ食べながら示されるアメリカ社会への希望
・総評
・製作秘話
・リチャード・ジュエルのオススメ度は?面白いのか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1996年アトランタ爆破事件の真相を追体験できる興味深さ

本作は1996年に起きたアトランタ爆破事件の真相を描く実話映画となっております。実話モノには徹底したリアリティを求めるのがクリント・イーストウッド監督だと個人的に思っているので、劇中に起こる殆どの出来事が事実に則った出来事なんだろうなと察しがつくんですよね。前作「15時17分、パリ行き」も実話モノ特有のリアリティ溢れる緊迫感が楽しめましたしね。本作も、そこら辺はバッチリです。実話モノの何が楽しいって、腕のある監督が撮る実話モノってマジでその事件を追体験出来るからなんですよね。日本人にとって馴染みの無いアメリカの事件をリアリティ溢れる映像で見せてくれるのが、ホント興味深くて面白いんです。
特に興味深いのは1996年当時のアメリカ人の危機管理能力の低さが描かれている点です。Liveイベントが開催されてるアトランタ記念公園でポンっと置いてある不審なリュックが見つかるのですが、そのリュックを前に「えっ、このリョックどうする?危険なのかな?いや大袈裟だよね?」みたいな感じで警備員達が呑気にダベッってる所とか、今なら有り得ない危機感の無さです。呑気な警備員共を叱咤しながら「このリュックヤバそうだから取り敢えず避難しよう」と騒ぐ主人公リチャード・ジュエルの姿がむしろ滑稽に見えてしまう位に、当時のアメリカ人は意外と平和ボケしていたんだなと新鮮な驚きを覚えます。

当たり前ですが当時は1996年であり、アメリカ人はあの9.11の経験してないんですよね。爆弾テロのヤバさを身を持って知ってる2020年のアメリカ人なら不審なリュック見つけたら即、爆弾処理班駆けつけるし即、避難勧告する事態なのに1996年はそれが無い。そこが1996年と現代のアメリカ人の危機管理能力の変遷を感じる印象的な場面で楽しめます。リチャード・ジュエルの喚く様な必死の避難勧告が無かったら、どれだけ多くの人が死んでいたんだろうと想像して、ゾッとする激ヤバ事件。そんなアトランタ爆破事件をたっぷりと追体験出来る作りにバシバシ引き込まれます。

クロ過ぎる過去の奇行ゆえ容疑者となるリチャード・ジュエル33歳

アトランタ爆破事件の現場で爆弾の存在に誰よりも早く気付き迅速な対応をした警備員リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)。彼は一夜にして英雄として全米中から讃えられる存在へとなっていくのですが、このリチャード・ジュエル33歳白人男性は単なる良い奴や立派な奴では無いんですよね。実は彼は警察など法を執行する立場の人間に強い憧れを持っていて、それが原因で過去に何度も問題を起こしてるんです。警備員でありながら勝手に家宅捜査をしてしまったり、道路で車のドライバーに注意勧告をして取り締まったり。明らかに警察しか出来ない事を警備員の立場でやってしまう、まぁまぁイタイ困った奴なんです、リチャード・ジュエルくんw。彼の警棒を手で弄びながらノシノシ歩く姿は、偉そうでちょい嫌な奴にも見えるんですよね。そんなちょっとした奇行と爆弾の第一発見者だった事が重なり彼は英雄から一転、容疑者になってしまう事に。勿論、彼が犯人じゃない事はあの必死の避難勧告の一部始終を観てれば明らかな訳なんですが、それでも、まぁ、クロ過ぎるんです、彼の周辺は。例えば友人にパイプ爆弾を作れる奴がいたり、リチャード・ジュエル自身、自宅に大量の銃があったり、そして過去の奇行レベルの問題行動の事実。こんな感じで彼が容疑者になりそうな要素はこれでもかって位に出てきてしまう、クロさと言いますか怪しさが彼の周辺にあるんですよね。正直、笑っちゃう位に怪しい要素満載で(笑)。こりゃ、メディアもFBIも彼を容疑者に挙げてしまうかもな、と多少思えてしまう不運な状況のオンパレードがリチャード・ジュエルに降りかかっていくのが、実話ながら非常に劇的で面白いんですよね。
疑われるのも仕方ない困った奴リチャード・ジュエル

スニッカーズが繋ぐ絆!不良に見えて常識人な弁護士ブライアント

明らかに無実なのに、周辺の状況がクロ過ぎて容疑者っぽさ全開の困った奴、リチャード・ジュエルに手を貸すのは弁護士ブライアント(サム・ロックウェル)。このブライアントって、最初は容疑者リチャード・ジュエルの有名っぷりにあやかり仕事を貰おうとする、庶民的な不良弁護士っぽい感じがしたんです。オマケにこの弁護士はスニッカーズって言うアメリカの有名なキャラメルチョコバーが大好きな人で、明らかに変わり者で頼りなさそうな感じするし。あっそれと超余計な事ですが自分、スニッカーズむっちゃ嫌いですw。ネットリ歯にくっつくキャラメルのあのジャンクな感じが健康に悪そうで嫌いなんですよねぇ。そんな食べ物を好きな弁護士ブライアントの事も嫌いになってきてる気が(笑)。ってな訳でスニッカーズ大好き弁護士ブライアントに対しては、またリチャード・ジュエルを貶める厄介な奴が関わってきたな位にしか思って無かったんですが、意外や意外。実はこの弁護士ブライアントって、冤罪事件に関わっている登場人物の中で1番まともな人なんですよね。本作の登場人物であるFBIや記者、容疑者リチャード・ジュエルも基本、冤罪事件の引き金になってしまってる駄目な奴らばかり。その中で、一見すると不良そうな弁護士ブライアントが1番、法や権利に対し普通のバランス感覚を持っているんです。だからこそFBIや記者がリチャード・ジュエル個人の権利を侵害しまくって違法捜査とバッシングをする状況についても「いや、これは流石に法治国家アメリカとしてやっちゃダメでしょ」と声を上げる展開にもなる訳でして。弁護士ブライアントって実にまともな人間であり多分、視聴者が1番共感できて感情移入できるであろう登場人物じゃないですかね。全米中を敵に回しながら無実を訴える事になる容疑者リチャード・ジュエルと弁護士ブライアント。2人が知り合う経緯も実話ならではの意外性があって面白いんですよ。彼らにとって最初の出会いのきっかけとなるアメリカの代表的なお菓子「スニッカーズ」、、よりにもよってスニッカーズw。
「そう言えば、ブライアントさんの好きなスニッカーズ無くなりそうですよ」「え、マジで?補充しとくわ。教えてくれてありがとね、リチャード」みたいなw。

「何じゃい!その普通過ぎて意外に感じる出会い方は!」とツッコミたくなる地味さが面白いんですw

まさか、この他愛ないスニッカーズ話から、既にアメリカ史に残る冤罪事件が幕を開けるって所が何とも数奇な運命を感じますよね。アメリカの庶民的お菓子「スニッカーズ」で繋がれた強固な絆?で理不尽なアメリカ社会に立ち向かって行くド庶民の男2人の姿は、ちょっとしたバディームービーにも似た楽しさがあります。
菓子スニッカーズが大好きな弁護士ブライアント

FBIやメディアの権威に喝!監督の冤罪に対するイライラ爆発!

1996年アトランタ爆破事件の犯人像を挙げる上でFBIやメディアが頻繁に使う言葉として出てくるのが「英雄になりたがる、英雄きどり、」って言葉があるんですよね。要するに自作自演で爆弾を仕掛けて発見して英雄になりたがる犯人像をプロファイリングとしてあぶり出し、それに運悪くリチャード・ジュエルっていう、ある種当てはまる奴が出てきたので容疑者にしたって経緯。そこはFBIの現場担当官と事件を追う女性記者が裏で繋がり、確証のない情報を流してしまった事がリチャード・ジュエルを容疑者にしてしまう原因にもなってるし。ここら辺のFBIとメディアのクソっぷりとずさんさは観ていてイライラしまくり。そんなイライラは本作の監督であるクリント・イーストウッドも絶対感じている筈で劇中でもFBIの違法捜査っぷりや自白強要、女性記者のナメた浅い報道倫理等をしっかりと描写して痛烈に批判しています。「英雄になりたがる、英雄きどりの自作自演の犯行、、」みたいな事件の犯人像にしても、「リチャード・ジュエルを逮捕して事件解決した英雄になりたがってるのはお前らFBIとメディアだろうがバカタレが!」というクリント・イーストウッドおじいちゃんの喝!を感じる場面多数です(笑)。
「英雄になりたがってるのはお前らFBIやマスメディアも同じだろ。冤罪を生む、お前らも犯罪者だ」くらいのイライラ爆発っぷりを言葉ではなく、圧倒的なドラマでガッツリと魅せてくれる所もクリント・イーストウッドの監督としての腕の良さをビシビシに感じるんですよね。更に言うと、クリント・イーストウッドおじいちゃんのイライラの矛先は冤罪の被害者である主人公リチャード・ジュエルにも向けられているんですよね。FBIやマスメディアの権威にただただ素直に憧れ信頼し自分が不利になる発言もペラペラと喋ってしまうリチャード・ジュエルの認識の甘さについても批判を込めながらしっかり描かれてるんです。
「リチャード・ジュエル君。キミは33歳の大人なんだからもっと、個人の権利や政治に対して自分の考えを持ち、もっとアメリカ政府を疑いなさい!信頼し過ぎるのは駄目だぞ!」的な事を言ってる気がするんですよね、クリント・イーストウッドおじいちゃんは(笑)。間違ってたらごめんなさいw。

FBIやマスメディアら権威を痛烈に批判しつつ冤罪被害者リチャード・ジュエル本人の落ち度にも言及してるこのバランス感ある物語の出来がホント最高です。どちらか一方に偏り過ぎていないからこそ実話ドラマとしての信憑性が上がるし、その信憑性があるからこそ観てる人間も「色々ダメな所もあるけど、やっぱりリチャード・ジュエルってかわいそうな冤罪被害者だよな」って所にしっかりと落ち着けるんですよね。この実話映画としてのバランス感覚の良さゆえに格段に出来の良いドラマとなっております。

無罪を勝ち取れる国?ドーナツ食べながら示されるアメリカ社会への希望

容疑者リチャード・ジュエルのクロ過ぎるし怪し過ぎるし不利過ぎる状況の中、弁護士ブライアントは無実を訴える為にメディア出演したり捜査に立ち会ったりと奮闘する訳でして。この頼りない弁護士ブライアント、意外とまともな弁護をするんだなぁと勝手に感心(笑)。そして遂に!カフェで打ち合わせをしてる2人の元にあのクソFBI現場担当官が来てポンっと置かれるのは無罪を証明する書類。このあっさり、無造作に冤罪が晴れる瞬間、しかもカフェで、、これがリアルなんですねぇ。意外とあっさりした冤罪事件の終わりを告げる瞬間、地味かと思いきや全くそんな事無し。自分の罪が晴れた事を噛みしめ涙ぐみながら注文したドーナツを頬張るリチャード・ジュエル、彼のその姿に思わず観てるこっちまで「やったな、リチャード・ジュエル!」と肩を抱きたくなる衝動に駆られる、静かな感動を与えてくれる超名場面です。彼を演じた主演ポール・ウォルター・ハウザーの繊細な演技もむっちゃ良くて、ポール自身もリチャード・ジュエルって男を「演じきったぞ」と噛み締めている様にも見えたりして泣ける泣けるw。そして感動と同時に湧き上がってくるのは彼に対しての同情の気持ちです。庶民的なカフェで庶民的なドーナツを1つ頬張る庶民的な白人男性であるリチャード・ジュエルが巻き込まれた冤罪事件のひどさを改めて感じます。
「こんなしがない庶民というか一般人になんちゅう容疑をかけてくれたんじゃい、FBIとマスメディアの皆さんはよ!」と改めて沸沸とした怒りが湧き上がってきてしまいますよ、マジで。自分、血の気が多くてすいませんw。

ただまぁ、そこについては逆に言うとド庶民なリチャード・ジュエルでも弁護士を立てて冤罪を訴えれば無実を勝ち取れる位、法律はちゃんとしてますよアメリカはって事でもあるんですよね。個人的にクリント・イーストウッドの監督作品の何が好きって社会や政府の権威を批判しつつも同時に愛国心に溢れ監督自身がアメリカ社会に希望を持っている所が好きなんですよね。本作でもドーナツを頬張るド庶民リチャード・ジュエルの姿が示しているのは誰もが個人の権利を主張出来る国アメリカ、法と秩序あるマトモな国アメリカって事なんでしょうね。だだし、そりゃ時々間違う事もあるけどねっていうオチw。

総評

いやぁ、素晴らしい作品でした。日本人には馴染みのないアトランタ爆破事件を追体験できるのが興味深いわ、楽しいわ、もう最高でした。クリント・イーストウッド監督の冤罪に対するイライラが爆発しつつも実話らしい地に足ついたドラマは信憑性溢れる良い出来で、リチャード・ジュエルの冤罪が晴れた瞬間には思わずガッツポーズ取っちゃう位に引き込まれました。クリント・イーストウッド監督作品としてもゴリゴリにお勧めです。うむ、面白かった!

製作秘話

  • 弁護士ブライアント役サム・ロックウェルはクリント・イーストウッド監督について「イーストウッドの様に役者経験のある監督と仕事をすると僕ら役者に対する思いやりを感じるんだ」と語っている
  • 撮影時、クリント・イーストウッド監督は「アクション!」の掛け声をせず静かに手で合図するだけの方法をとるのは西部劇出演時代の名残りと言われている。特に西部劇では馬を掛け声で怖がらせない為に手の合図だけで撮影を始める事がよくあったとの事。
  • リチャード・ジュエル役の主演ポール・ウォルター・ハウザーはイーストウッド監督について「監督は役者に自由に演じさせて役の理解を促してくれるんだ。でも撮影中は僕の演技はアドリブが多過ぎると監督によく言われてたよ」と冗談交じりに語っている。
  • 本作では事件当時の1990年代らしい手持ちカメラの映像にこだわって作られている。その映像を通して当時の事件に対するマスコミの目線を再現する為。
  • 劇中の記念公園のイベントや爆破シーンの撮影は実際の記念公園にセットを仮設して撮影している。
  • 息子であるリチャード・ジュエルを演じたポールの演技について母親ボビ・ジュエル本人は「ポールに初めて会った時、息子に似過ぎていて鳥肌がたった程よ。歩き方まで息子にそっくりなの」と絶賛している。

リチャード・ジュエルのオススメ度は?面白いのか?

オススメ度   80点

万人に勧める良作❗️

オススメ度とは?

0〜20点・・・サイテー激ヤバ作

30〜40点・・・何か個人的に嫌い

50〜60点・・・個人的に超好き

70〜80点・・・万人に勧める良作

90〜100点・・・最高な超傑作

最新情報をチェックしよう!
>〜ヌルい映画レビューにお付き合い下さい〜

〜ヌルい映画レビューにお付き合い下さい〜

ハリウッド大作から劇場未公開なマイナー作品まで日々映画鑑賞。ちょっとした映画の感想、好きな俳優の事を気ままに記事にしてます。

CTR IMG