こんにちは、ぽんぽです。普段は専ら、アクションとホラーしか観ない偏りまくりな映画遍歴を持つ自分ですが、たまには重くて深い映画も観るんです(エヘン)。まぁ時々なんですけどね。映画タイトルから察するに同性愛を扱うヘヴィーな映画だろうなと思いつつも、いや、むしろ今はそういうヤツが観たいのだ!と久々に「さぁ!映画観るゾ!」と気合を入れて劇場へと向かいました。では本作の感想(ネタバレ)、紹介していきたいと思います。
目次
「ロニートとエスティ 彼女たちの選択 40点(感想ネタバレ)」
作品情報
2020年劇場公開 イギリス ジャンル:ドラマ 監督 セバスティアン・レリオ 製作 レイチェル・ワイズ他 出演者 レイチェル・ワイズ、レイチェル・マクアダムス、アレッサンドロ・ニボラ
あらすじ
超正統派ユダヤ・コミュニティで生まれ育ったロニートとエスティは互いにひかれ合うが、コミュニティの掟は2人の関係を許さなかった。2人は、本当の自分を取り戻すため、ある決断をする。(映画comより抜粋)
目次
・閉鎖的なユダヤコミュニティーで葛藤するロニートとエスティ!
・生々しいラブシーンは獣の如く!レイチェル・ワイズ&レイチェル・マクアダムスの熱演!
・モーセ五書の教えを身を持って示す!夫ドヴィッドの優しく男気溢れる選択!
・ロニートとエスティが交わす「より善き人生を」の言葉が胸に響くラスト!
・総評
・製作秘話
・ロニートとエスティ 彼女たちの選択のオススメ度は?面白いのか?
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閉鎖的なユダヤコミュニティーで葛藤するロニートとエスティ!
本作は閉鎖的で古臭い宗教観のユダヤコミュニティで生きる2人の女性の葛藤の物語となっております。 【ロニート】 彼女は正統派ユダヤ教徒コミュニティの閉鎖的で古臭い価値観が漂う町に嫌気が差してNYへと渡ったカメラマン。プカプカとタバコを燻らし気が向けば行きずりの男とSEXする、言うなれば今時の自立した都会のキャリアウーマンなんです。彼女の「ここにいたら不幸になる」の言葉に、観ている側も「うんうん」と頷ける位に町の住人含め正統派ユダヤ教徒の暮らし振りは独特かつ堅苦しくて、確かにこりゃ不幸になるかもと思えます(失礼w)。 意外だったのは欧州の宗教に馴染みがない日本人にとってはユダヤ教徒だったロニートの心情って理解し難いかと思いきやそうでも無いんです。日本人にとっても住み慣れた田舎だと閉鎖的で古臭い価値観に嫌気が差す事ありますよね。早く結婚しろ!とか周りみんな知り合いばかりとか。恐らく日本で例えるなら田舎が嫌になり誰も知らない都会の東京に行く感覚、それと似た感じがするんですよね、ロニートの生き方って。しかもロニートの父親はユダヤ教の指導者なので、かなり家柄的にもゴリゴリの信仰に厚い家柄ともなると、そりゃ信仰心がマイルドなロニートの価値観では居心地が悪くなり父親と反りが合わなくなるのも当然かと。ただねぇ、信仰心の有無で親子の仲が疎遠になってしまうのは、やはり日本人としては理解し難い所もあるんですよね。 正統派ユダヤ教の閉鎖的なコミュニティーは観ていて若干ドン引きしつつも、主人公であるロニートの価値観は非常に現代的で彼女の生き方や価値観には十分、感情移入出来るので物語に問題無く引き込まれていきます。 【エスティ】 閉鎖的なユダヤコミュニティを飛び出したロニートとは正反対で敬虔なユダヤ教徒のエスティ。彼女は大人になってからもユダヤコミュニティに身を置き、教職につきながらも良き妻として暮らす日々。そんな信仰心も厚く、古臭い宗教観もしっかり守る暮らしをしてるのですが、その暮らしぶりは日本人からすると興味深い事ばかりなんです。 常に服装は質素で外出時は髪をカツラで隠したり、おまけに金曜日には夫婦で必ずSEXしなければならない、など。正統派ユダヤ教徒の信仰に基づく日常生活は、これ程までに珍しい生活ぶりなのかと新鮮な驚きを覚えます。ぶっちゃけ、これだけ日常生活に縛りをもたらす厳しめの教えが意外。ユダヤ教徒って何となく欧米の宗教だから、結構ゆるい感じの生活してそうだと思っていたのですが、エスティみたいな、コアでゴリゴリのユダヤ教徒は、かなり縛りの厳しい生活を送っている実態があるんですね。この厳しさって素人ながらイスラム教にも通ずる厳しさでは?とか思ったり、、、ってユダヤ教とイスラム教を一緒に論ずるのは誰かに怒られそうですけども、ね(笑)。 本作の魅力はエスティの暮らしぶりを通してユダヤ教徒の日常生活を知る事が出来る所です。うむ、めっちゃ勉強になるけど、正統派ユダヤ教徒にはなりたくないゾ(笑)。
生々しいラブシーンは獣の如く!レイチェル・ワイズ&レイチェル・マクアダムスの熱演!
父の死をきっかけに帰郷したロニートは偶然、そこで幼馴染とも言える存在のエスティと再会するんです。この再会の時点で2人の間には何処か気まずい雰囲気があって、「あれ?この2人仲悪いのかな」と最初は思うんです。特にロニートは都会的で信仰とも距離を置く生き方をしている訳で。敬虔なユダヤ教徒のエスティからするとムカつく所もあるのかなぁ?とか思いながら観ていたのですが、早い段階でそれは間違いだと気づくんですよね。この2人、女性同士でありながら、お互いを愛してしまっているんです。エスティに至っては人妻ですし閉鎖的なユダヤコミュニティで、夫がいながら別の人を愛する事は宗教的にもマズいんですよね。特にその愛する相手が同性の女性ロニートなので尚更。しかしながら、思わぬ再会を果たしまい、お互いを求める気持ちは爆発!ロニートとエスティが誰も見ていない2人きりになった瞬間に、我慢出来ず深いキスを交わす姿は何とも言えない生々しさ。 特に2人のラブシーンは獣の如くとも言える圧巻のシーンです。お互いの手で愛撫し合い、唾液を交換しキスする姿は激しく生々しさ抜群。そこには女同士のラブシーンにありがちなロマンチックさや綺麗さはあんまり無くて、唯々お互いを貪りあう感じで兎に角、スンゴク生々しい(2回目w)。もう、エスティの表情が凄いんです、マジで。エスティは愛し合う最中も何処か悲しげで苦しそうで彼女がどれだけ信仰の中で自分を押し殺して生きてきたのかが垣間見えるんです。エスティ役レイチェル・マクアダムスの女優魂を見せつけられ、口をポカーンと開けながらラブシーンを拝む羽目になりました、自分w。 本作最大の見所とも言える圧巻のラブシーンは閉鎖的なユダヤコミュニティで抑圧された女性の鬱屈した思いが爆発しております。このラブシーンを演じるレイチェル・ワイズとレイチェル・マクアダムスの熱演にヤられました。スンゴイ女優さんですな、この2人。
モーセ五書の教えを身を持って示す!夫ドヴィッドの優しく男気溢れる選択!
ロニートとの再会がきっかけで夫を愛していない事を改めて実感するエスティ。その最中、彼女は夫ドヴィッドの子を妊娠するのですが、それも構わず夫に「貴方を愛そうとしたけど駄目。私を自由にして」と離婚を伝える事に。保守的で閉鎖的なユダヤコミュニティでその決断をする事は敬虔なユダヤ教徒のエスティにとってはかなり大きな決断です。 ただ個人的にはエスティの決断以上に興味を抱くのが離婚を切り出された可哀想な夫ドヴィッドです。ドヴィッドは将来的にはユダヤ教指導者になる程の敬虔な信仰心の持ち主であり、良き夫なんです。物静かで地味ですが、優しげで妻エスティを愛しているのは充分、伝わってくる良い奴。それなのにエスティから別れを告げられてしまう不憫さ。しかもエスティのお腹には自分の子供がいる最中に離婚って、、結構最悪なタイミングw。良き夫としてあり続けたのに、妊娠と離婚を同時に告げられてしまうって普通ならブチ切れ案件ですよね。もうこの時点でロニートとエスティの人生の選択よりも、夫ドヴィッドの人生の選択に俄然興味が出てくる謎の展開にw。 敬虔なユダヤ教徒の彼は果たしてロニートとエスティの関係を認めるのか?離婚を認めるのか?。そこで終盤の見所となるのは追悼式です。夫ドヴィッドがユダヤ教指導者を受け継ごうとする追悼式の場で夫ドヴィッドがすんばらしい演説をぶちかましてくれます。 「神様は人間に選択の自由を与えてくれた。例えそれが人間にとって重荷だろうとも選択の自由はあるんだ」と。 追悼式に出席している妻エスティに向けて「君は自由だ」と。この言葉がまぁ素晴らしいったらありゃしないのです。 察するに10代から敬虔なユダヤ教徒である夫ドヴィッドにとってはロニートとエスティの同性愛的な関係は許し難い部分もある筈なのに、ユダヤ教の教えに従いそして自分なりのユダヤ教の教えを見出し、ロニートとエスティの関係性を認める懐の深さを見せてくれます。宗教本来の在り方とも言える赦しと救いをロニートとエスティにもたらし、優しさと男気を見せる夫ドヴィッドの選択が泣けます。妊娠と離婚を同時に告げられた苦しみを呑み込みユダヤ教徒のバイブルであるモーセ五書の教え通りにロニートとエスティの人生の選択を高らかに肯定する夫ドヴィッドの姿がカッコ良くて切なくて。「こんな良い人と離婚するの?」と彼の元を去るエスティに一言文句を言ってやりたくなります(笑)。 正に夫ドヴィッドの演説にユダヤ教徒の男性の魅力と高い信仰に真髄を見た感じですし、このシーンのお陰で少しユダヤ教徒への印象が良くなりました。正直、ロニートとエスティに対して冷たいユダヤコミュニティとユダヤ教に関しては観ている側も苛ついていたので。夫ドヴィッドの優しさと男気がユダヤ教徒への苛立ちを和らげてくれましたし、彼の演説によりユダヤ教っていう宗教の崇高な印象も何とか守れた感じです。って言うか、夫ドヴィッドの存在が無ければ、「うわっユダヤ教徒って面倒臭い!」って印象しか持ちませんからね、この映画w。
ロニートとエスティが交わす「より善き人生を」の言葉が胸に響くラスト!
さて追悼式を終え互いを認め合ったロニート、エスティ、ドヴィッドの3人ですがその後の展開は何とも重い顛末です。 ・ロニートはエスティに別れを告げ町を出る ・エスティは離婚し一人で子供を育てる ・エスティの夫ドヴィッドは離婚しユダヤ教指導者の地位を退く こんな感じで3人の選択した生き方はどれもハッピーエンドとは程遠い生き方です。 ロニートはエスティと結ばれず、エスティは今後シングルマザーとして生活的にも厳しくなるでしょうし、夫ドヴィッドは離婚で妻子と指導者の地位を失うし。3人の選んだ生き方はメリットよりデメリットの方が大きく感じる生き方で「え?もっと誰もが喜ぶ様なラストにはならないんだ?」って感じの不満が残る結末に観ている側もガッカリ。 でも、そこではたと気付くのがユダヤ教徒同士がよく交わす「より善き人生を」って言葉が持つ意味です。何て言うか人生に於ける選択ってベストの選択、又は絶対に間違いない確実な選択って存在しないんですよね。だからこそ人は取り敢えず今よりも少しだけ善い人生が送れそうな選択を重荷、リスクを背負いながら葛藤し選択していくんですよね。ロニート、エスティ、ドヴィッドもそれを覚悟の上で選択し互いに「より善き人生を」と最後の言葉を交わす場面のビターな感じ、これぞ人生w。 別れ際にエスティが「私、強い母親になるわ!」と涙ながらにロニートに伝え、 ロニートは「貴方は素晴らしい母親になるわ!」と力一杯のエールをエスティに伝える場面は最高に泣けます。 ユダヤ教の「より善き人生を」って教えの言葉が優しく胸に響くラストとなっとります。
総評
宗教が根底にある同性愛の物語って難解かも?と思っていたのですが全く問題無し!でした。誰もが共感出来る様にユダヤ教の教えの1番共感されやすい部分をピックアップして構成されている物語は分かりやすいですし、イギリスのユダヤ教徒の暮らしぶりを知れるのも面白かったです。そしてロニートとエスティのラブシーンは圧巻!ラストも泣ける! しかしながら、非常に地味です。 暗雲とした町で陰鬱な雰囲気を放つユダヤ教徒コミュニティは地味だし息苦しいし。結局、本作ってユダヤ教をリスペクトする場面を混ぜつつも基本は、人生の選択に大きく絡んでくる宗教観ってモノを陰鬱で面倒臭いモノとして描いている気がするんです。 そこら辺含め、本作の根底に流れる宗教に対しての批判精神を強く感じるので、少しラストの感動も薄れてしまい気味で個人的に苦手です。宗教を扱った映画で陰鬱な暗い映画って自分が1番苦手な映画ジャンルなんですw。本作はゴリゴリにそのタイプなので評価低めとなりましたw。
ロニートとエスティ 彼女たちの選択のオススメ度は?面白いのか?
オススメ度 40点
何か個人的に嫌い❗️
オススメ度とは?
0〜20点・・・サイテー激ヤバ作
30〜40点・・・何か個人的に嫌い
50〜60点・・・個人的に超好き
70〜80点・・・万人に勧める良作
90〜100点・・・最高な超傑作