こんにちは、ぽんぽです。ニコラス・ケイジと言えば、近年は珍作・駄作への出演が相次いでいる印象ですよね(失礼w)。そんな彼がお次はホラー映画で怪演を披露するらしい?との事を聞きつけ早速、劇場へ。観る前の印象としてはB級バイオレンスホラーっぽいしハズレでは無さそうだぞ、、と予想w。では本作の製作秘話含めた感想(ネタバレ)、紹介していきたいと思います。
目次
「マッド・ダディ 60点(感想ネタバレ)」
作品情報
2019年劇場公開 アメリカ ジャンル:ホラー 監督 ブライアン・テイラー 出演者 ニコラス・ケイジ、セルマ・ブレア、ランス・ヘンリクセン、アン・ウィンターズ、ザカリー・アーサー
あらすじ
2人の子どもにも恵まれ、幸せな毎日を送っているブレント。しかし、愛する子どもたちの顔を見た瞬間、ブレントの心に「この子たちを殺さなければ」という正体不明の殺意が生じてしまう。(映画comより抜粋)
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豹変した親が子を殺す姿はゾンビさながら!
反抗期の娘カーリー、小さいながらも活発に動き回る息子ジョシュに頭を抱えながら日々を過ごす夫ブラントと妻ケンダル。リビングには息子のおもちゃが散らかし放題で苛立つ夫ブラント、反抗期の娘からは「ママの人生はつまらない」とまで言われ親ながらに傷付く妻ケンダルなど子供に対する夫婦の苛立ちが募っていく描写が丁寧で共感しまくりです。特に年頃の子を育てる苦労の中で若かりし過去を思い出し「自分の人生はこんな筈じゃなかった」と後悔する夫婦の葛藤と不穏なピリつき感が徐々に増していくのが怖くて楽しいんですよねぇ。 そんな中、全米中で親が我が子を殺す事件が多発! 豹変した親がゾンビさながらに我が子に襲いかかり、殴り、絞め殺す姿が最高にヤバくて爽快です。ニュース速報で「親が我が子を殺すのは動物の世界ではよくある事です。専門用語で子殺しと言います。危険ですので親は子供に近付かないで下さい」とあり得ない内容の注意喚起をするキャスターに爆笑しましょう。 こうゆう邪魔な説明は省き、スピーディーに世界の崩壊を伝えるストーリー展開って割と好きです。うむ、突如として親が子を殺す最悪の状況下となったアメリカ、大好きだゾw。 そして当然ながら、普段から子供達に不満を持っていた夫ブラントと妻ケンダルも豹変し娘カーリーと息子ジョシュに襲いかかる事態に。ニヤっと笑いながら近づき明らかに我が子を殺す気満々な夫ブラント役ニコラス・ケイジの怪演がハマっております。ニコラス・ケイジって「ブチ切れたヤバ気なおっさん」演技させたら天下一品ですよねw。 面白いのは親が豹変した原因をウィルス感染や謎の力では無く、あくまでも感情の爆発と本能によるモノとして描いてる所なんですよね。 しかも夫ブラントや妻ケンダルが日頃から子供への苛立ちを我慢しながら過ごしていた描写が丁寧だったので感情が爆発し豹変する様も非常に説得力があるのですw。 まぁ、親が本気でブチ切れたらトンデモない事になるって、幼い頃の思い出を振り返れば、自分でも想像付きますしねw。
「アドレナリン」監督らしいスタイリッシュな映像で殺し合い!
ジェイソン・ステイサム主演アクション映画「アドレナリン」を手掛けた、ブライアン・テイラー監督らしいスタイリッシュな殺し合いも魅力的です。我が子を追いかけ回す豹変した親の姿をスピーディーかつスタイリッシュなカメラワークと映像により存分に表現されています。 意外なのは本作のバイオレンス描写がマイルドな所です。 親が子を殺す設定は過激ですが、子供を殺す直接的なシーンは少なめなのは残念ですかね。しかしスタイリッシュな映像による取っ組み合いや殺し合いは迫力満点ですし、そもそも家の中で豹変した親に追いかけ回される状況自体がバイオレンス&ホラーなので十分に満足出来るかと思います。 それに自分達を殺そうとする夫ブラントと妻ケンダルに銃やガス爆発トラップで対抗する息子ジョシュと娘カーリーの反撃っぷりも中々に容赦無くて面白いんですよね。 特に息子ジョシュが銃で妻ケンダルを撃った際、夫ブラントが「銃は家に頭のおかしな奴が入ってきた時の為に買ったのに!」的な事をのたまうのが最高です。 いや、頭のおかしな奴はあんただよ!夫ブラントよ!みたいなw。 他にも娘カーリーがガス爆発により夫ブラントを吹き飛ばす反撃方法は、「カーリーよ、君は特殊部隊にでもいたのかな?」と聞きたくなる位の見事なトラップ攻撃にツッコミながら爆笑出来ますしw。 極め付けは祖父母が夫ブラントを殺しにくる超展開! 夫ブラント側の祖父母が家に訪ねてきた目的は当然ながら息子であるブラントを殺しにきた訳でして。子供達からすれば、おじいちゃんとおばあちゃんが親と殺し合う地獄絵図を目の当たりにするんですよね。うーむ、すんごい勢いで家族崩壊しとりますなw。挙句の果て、愛車ファイヤーバードで祖父母を轢き殺す夫ブラントのキレっぷりが爽快で「ヒャッホウ!」と声を上げたくなる魅力的な地獄展開にw。 何より、殺そうとしてくる奴が唯の不審者ならぶっ殺せばいいですけど、子供達にとっては親であり祖父母ですからね。殺す訳にもいかず、取っ組み合いで押さえつけるか、逃げ回るしかない娘カーリーと息子ジョシュの絶望的な状況が楽しくてかわいそう(どっちやねんw)。 本作ってバイオレンス描写はマイルドなのに、取っ組み合いや殺し合いのアクションシーンとシチュエーションに緊迫感があるので結果、バイオレンスホラー映画としての過激さは担保されてるのが良いんですよね。
これで終わり?なラストを考察したら評価爆上がりなニコラス・ケイジの怪演!
親子の命懸けの鬼ごっこ?もとい攻防戦の末、夫ブラントと妻ケンダルを捕らえた娘カーリーと息子ジョシュは親を正気に戻したいが為に「パパ、ママ大好き」と必死に親への愛を訴えるも、一向に大人しくならない親達。 ニコラス・ケイジ演じる夫ブラントはイッチャッた目で「パパもママもお前達が大好きだ。でも時々!無性にお前達を、、、!」 、、、でエンドロールへ。 「ん?えっ?」と一瞬、何が起こったのか分からない程の唐突なラストには驚きを隠せません。何じゃこりゃ?これで終わり?と誰かに問い正したくなる尻切れトンボな上に、親子がその後どうなったかを一切描かず不穏な空気を残したまま終わるとは、、。 正直、このスッキリしないラストは好き嫌いがガッツリ別れるかと思います。 確かなのはブライアン・テイラー監督はエンターテイメント性の高い映画を多く手掛けるやり手の監督なので、分かりやすい爽快感あるラストを撮ろうと思えば撮れた筈なんですよね。この手のB級バイオレンスホラーに観客が何を求めるか?どんなラストを求めてるか?は恐らく、監督自身も十分承知の上で敢えてこのラストにしたのは明白かと。 ならば、この好き嫌いが別れる、明らかに作品の評価を下げかねない尻切れトンボ風ラストにした理由は考察せねばなりますまい、このワタクシが!(誰も頼んでないw) 何故、親子のその後を描かず不穏な空気を残したまま尻切れトンボ風なラストになったのか? 自分なりのヌルい考察していきたいと思います。 まず本作は親が子を殺す過激な設定が表向きにありますが冒頭のオープニング曲の歌詞から見て取れる通り、実は「人生の後悔と葛藤、生きる痛み」がテーマなんですよね。子育てのストレスが爆発し親が子を殺す展開になってはいますが、それ以上に親自身の人生への後悔と葛藤が背景として描かれてるんですよね。夫ブラントも妻ケンダルも若かりし頃の自分を思い出しては「自分の人生はこんな筈じゃなかった」と後悔し葛藤した上で、子供への苛立ちも募っていくダブルパンチな日々ゆえに、あの地獄絵図に、、って訳ですから。 ここでポイントなのは「人として、親としての人生の後悔と葛藤」です。 このどれもが終わりが無い上、答えも無くずっと続いていくモノなのです。 だからこそ、ラストも「終わりが無い」、答えを出さない尻切れトンボ風な終わり方になっているのではないでしょうか。 自分含め視聴者が望むラストとしては 夫ブラントと妻ケンダルが正気に戻り子供達を抱きしめて、めでたしめでたし! みたいな終わり方の方がスッキリするかと思いますが、そもそも正気に戻ったとしても夫ブラントと妻ケンダルの人生の問題が解決される訳じゃないんですよね。 たとえ正気に戻った後も、2人はやっぱり「自分の人生はこんな筈じゃなかった」と後悔し葛藤するだろうし、子供達への苛立ちから「殺してやりたい」と思う事も、そりゃあるだろうし。 そんな人として親としての後悔や葛藤、生きる痛みを抱えながら生きていくであろう夫ブラントと妻ケンダルが、最後は正気に戻ってニッコリ笑顔でめでたし、、みたいなラストは余りにもご都合主義で綺麗事な気がするのです。 だからこそ、劇中では最後までもがき苛立ち、子供への殺意を口にした、夫ブラント役ニコラス・ケイジの怪演が重要な意味を持ってるんですよね。 「分かり易いハッピーエンドなんか無い!後悔と葛藤で苛立つ、人として親としての人生に終わりはないんだよ!クソッタレ!」 とでも言いたげな不穏な空気を残して視聴者をスッキリしない気持ちにさせた、この尻切れトンボ風なラスト。 それは決してブライアン・テイラー監督が匙を投げた訳でもないし、彼のクソセンスによる物でもなく、本作のテーマである「人として親としての人生に於ける後悔や葛藤は続いていく」を最初から最後まで一貫して真摯に描いた結果として、この敢えて「親子の今後を描かない」尻切れトンボ風なラストになったのかと思います。 終わりなんかないんですよね、この家族には、、だって続いていくから、、って、いうね。 自分としてはその考えに至った為、本作のラストについては評価が爆上がりです。よく言う、駄作とは作り手にセンスのズレや打算による浅いテーマ設定が透けて見えた時にイラッとして「これ駄作じゃん」と評価したくなると思うのですが、本作を手掛けたブライアン・テイラー監督にはそれが当てはまらないと思うんですよねぇ。 「親が子を殺す」映画をスタイリッシュかつ丁寧に描いてる感じがするし、そこにニコラス・ケイジの後悔と葛藤たっぷりな怪演が加わりバランスの良いバイオレンスホラーに仕上がってるかと。
総評
無駄な説明を省き、感情と本能で親が暴れ出し子を殺すシンプル設定が好きです。 それと子を殺す直接的なバイオレンス描写は少なめですがスタイリッシュな映像による親子の攻防戦は迫力あるので、満足出来るかと思います。 あと尻切れトンボ風なラストは本作のテーマを鑑みるに充分納得出来る終わり方でしたし、自分としては評価爆上がりでした。 ただバイオレンスホラー映画観て、スッキリしたい方には不満が残るラストかと思います。 何よりも近年、珍作、駄作への出演が多いニコラス・ケイジ主演作品の中では良作の部類に入りますし、彼の怪演が非常に活かされていて、面白かったです。
製作秘話
- 親が子供を殺す内容の本作についてブライアン・テイラー監督は「僕も息子が一人いるのだけど、周囲からは何故、こんな映画を作ったのかと心配されたよ。でも親ならみんな共感出来るんじゃないかな」と冗談混じりに語っている。
- 本作の内容についてはニコラス・ケイジ自身も「親が時折、子供を殺したくなる位に頭にくる事はよくある」と子を持つ親ならではの悩みをインタビューで語っている。
- ブライアン・テイラー監督曰く1番の見せ場は祖父母がブレンドとケンダルを襲う場面。この終盤の見せ場を活かす為に映画全体の構成を考えたとの事。
- ブライアン・テイラー監督は「最後、子供が助かってしまうオチは残念だった。出来れば子供達を仕留めたかった。続編があれば実現したい」と語っている
- 映画祭での質疑応答で父親ブレンドを演じる上で1番難しかったシーンは?との質問に対しニコラス・ケイジは「ビリヤード台をハンマーで壊すシーンが体力的にキツかったよ。だって僕は53歳なんだぜ」と語っている。
- ブライアン・テイラー監督は自身の映画作りについて「僕は映画全体もしくは撮影現場に於いても空気感が理解出来ない人間なんだ。だから本作でも一つ一つのシーンを全く別の作品を撮る気持ちで撮影していて全体の空気感の統一は意識してない」と語っている。
マッド・ダディのオススメ度は?面白いのか?
オススメ度 60点
個人的に超好き❗️
↓U-NEXTで「マッドダディ」視聴可能です!
本ページの情報は2021年2月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
オススメ度とは?
0〜20点・・・サイテー激ヤバ作
30〜40点・・・何か個人的に嫌い
50〜60点・・・個人的に超好き
70〜80点・・・万人に勧める良作
90〜100点・・・最高な超傑作